Bollywood No.037
Laal Singh Chaddha (2022)
約半年ぶりのボリウッド映画劇場鑑賞
本作は当初2020年公開でアナウンスがありましたが、コロナで遅れに遅れ2022年8月11日(インド独立記念日の週)にインド公開となりました。
最初は見る気満々でいましたが、月日が経つに連れテンションは下がり本作を観にわざわざ劇場にいくつもりもなかったのですが、自身の誕生日ということもあり女房に連れられて行ってきました。
テキトーに解説
何度も紹介してますが、トム・ハンクス主演フォレスト・ガンプ(1994)のリメイク作
公開前のトレイラーを見る限りほぼ丸パクリのような気が。。。。
こういったタイプの映画は公開が遅れたせいで興行を下げると思われます。
そもそも2020年公開予定だったためある程度の情報がでておりトレイラーも出回ってます。
数週間後に見る映画であればテンションはもちますが、流石に2年も経つと飽きてしまいます(自分がコレ)
それでもAamir Khanのハリウッド映画リメイク!となるとGhajini(2008)を思わずにはいられない。
一応期待はしてしまいますね。
また、本作は構想から20年をかけて仕上げた労作。
仕掛け人は名優Atul Kulkarni
彼はフォレストガンプのストーリーを10年かけて脚色し、次の10年でリメイク権を得ました。かなりゆったりした仕事ですが、昔のボリウッドであればリメイク権にかけた10年はいりませんでしたね(勝手にパクる)
映画のストーリーですが、フォレストガンプのインド版と言っていいでしょう。
ちょこちょこインドならではのストーリーが追加される程度でほぼ同じ!
わざわざここでストーリーをばらす必要はなし
これの脚色に10年かけるAtul Kulkarniは流石です!
この映画の評価ですがフォレストガンプを知らない方は文句なく高評価がでるでしょう。
フォレストガンプを見たことのある方は各箇所で比べてしまうのではないでしょうか?
自分の場合1994年公開で映画好きには必見のフォレストガンプをきちんと見たことがありません。
今から2~3年くらい前にタイのTVでたまたまやっていたのを見ただけ、2度見たのですが1回目はいろいろと仕事をしながら何となく見ており、2回目もそんな感じ。2回観て大筋がだいたいつかめてはいますが、そもそもこのTV映画は激しくカットされており編集もかなり雑でした。
終盤フォレスト・ガンプが全米を走り抜けるとこなど印象的な場面は覚えてますが、細かいところは見てません。
今回自分が女房より楽しめたのはそのせいかもしれません。
フォレストガンプでは主人公の人生がすすんでいく中でその時の世界的な事件にフォーカスされている場面があります。
同じくLaal Singh Chaddhaでもインド情勢が映し出されてます。
フォレストガンプの場合
ベトナム戦争と反戦運動、ブラック・パンサー党、ウォーターゲート事件、エルヴィス・プレスリー、ジョン・レノン、ヒッピー、アップル社などなど。。。
Laal Singh Chaddha(シク教徒)の場合
ブルースター作戦(1984)
インディラ・ガンディーによるシク教過激派を排除するために行われた作戦。インド軍・シク教過激派合わせて1,200以上の戦死者、民間人の犠牲者は5,000-20,000人と言われている悪名高き作戦
Laalは幼少期に黄金寺院周辺で家族に守られながら砲撃の音をきく。
インディラ・ガンディー暗殺(1984)
ブルースター作戦が行われた後もLaalの母はインディラ・ガンディーはあんな事をしたけど悪い人ではないといい聞かせていた矢先にラジオからインディラ・ガンディー暗殺のニュース。
反シーク暴動
母と共にデリー滞在中のLaal、シク教ドライバーのリキシャに乗って移動していたところデリー市民によるシク教と虐殺に遭遇。上記2件の事件からシク教徒とヒンドゥー教徒の対立が激しくなっており、ドライバーは連れ去られ、Laal1は母と共に逃げ周り最後はLaalの髪の毛を短く切り落とし難を逃れる。
シャールク・カーン
デリーに滞在するLaal、青年たちの遊んでいるところを眺めていると一人の青年が声を掛けてくる。その青年こそ若き日のシャールク・カーン。
ここでは本人が驚きのゲスト出演!
カルギール戦争(1999)
インド-パキスタン戦争の一つ。
カシミール州カルギールに停戦ラインを超えてパキスタン軍が侵入し僧侶などを殺害し駐屯地を占拠。
停戦ラインからかなりインド側にある町にパキスタン軍に入り込まれた事件だったためインド側の危機感がさらに強まりました。
このカルギールは1996年に1週間ほど滞在した事があります。自分が訪れた3年後にこのような事がありショックを受けた記憶があります。
Laalはインド軍人としてカルギールにてOperation Vijayに参加。
Rupa Company
有名なインナーウェアの会社。亡くなった戦友の意思をついでLaalが立ち上げ大成功する。Rupaは実在する大企業で自分も商品を購入したことがあります。
ムンバイ同時多発テロ(2008)
記憶に新しいイスラーム過激派によるテロ(実行犯は最大25名)
ムンバイ市内の10カ所で起こった同時多発テロで約170名の方が犠牲になりました。
当時インドに滞在しておりこのテロについてはコルカタにてTVの生中継を現地のイスラム系インド人の友人とみてました。
当初コルカタに来る前にムンバイに行く予定でしたが、都合によりムンバイをキャンセルしてました。今思えば予定通りムンバイに行っていたら、、、と今でも考えてしまいます。
とにかく当時TVに映し出されていた燃え盛るTaj Hotelが忘れられません。
Cast
Aamir Khan as Laal Singh Chaddha
PKでやっていた演技とほぼ変わりなし、
ここでのAamirの演技を観てPKを重ねた人は多いでしょう
もちろんだれでもうまくやれる役柄とは思いませんが、ちょっと新鮮味に欠けましたね。彼は若き日のLaalを演じるために20kgの減量をしました。この辺は相変わらず彼らしい。。。
本作では自身の制作会社を使いプロデューサーとしてリメイク権の取得にも尽力しました。
コロナなどでしばらく新作を見れないうちに彼も57才となり、Kiran Raoとも離婚してしまいましたね。。。
特別出演以外では次回作のアナウンスはいまのところなし
Kareena Kapoor as Rupa D'Souza
映画出演はIrfun Khanの遺作Angrezi Medium(2020)以来
Laal役のAamirと共に主人公が大学生になる辺りから登場。
今ではSaif夫人となり二人の子供を持つKareenaも40才を過ぎました。
それでもまだまだ大学生役は通用します。肌の張りがいいのか?メイクのおかげか?あまり齢を感じさせません。
中盤まではこの役をわざわざKareenaが演じる必要はあるのか?と思いましたが、エンディングに近づくにつれてRupaの変化をうまく演じてました。
それでもKareenaを配役する必要性は感じなかったですね。重要な役ではありますがインパクトのあるキャラクターではありません。
このキャラ設定ではフォレストガンプの方がよかった。
Naga Chaitanya as Balaraju "Bala" Bodi
テルグ映画では名の知れた俳優さんだそうです。
ボリウッド映画は今作でデビュー
役のせいかいい表情をする役者さんです。
ボリウッドで主演をすることはないでしょうが何を演じさせても上手そうな俳優ですね。
今後もチェックしていきたい。
Mona Singh as Mrs. Chaddha, Laal's mother
Laalの母親を演じますが,実際はAamirより17才年下でKareenaと同年代です。
テレビドラマやテレビの司会者としての方が有名
映画デビューは本作と同じくAamir Khan主演の『3Idiots(2009)』、同じく本作でも共演のKareenaの姉で妊婦の役をした女優さんと言えばわかるでしょう。
本作への出演はその辺のつながりと彼女がチャンディーガル出身のパンジャービーであることからでしょう。
Utt Pataang(2011)でも彼女をみてますが、とにかく見事なパンジャーブビューティーで主演格のMahiと共に怪しい映画に華がありました。
Utt Pataang(2011)
Manav Vij as Muhammad
この人も役者としてのキャリヤを全く知らない?と思ってたらけっこう出演作を観てました。
Punjab州Firozpur出身で役者の前はなんと!医者だったそうです。
キャラ設定から演技から本作の目玉の一つ!
カルギール戦争でインド軍と争ったパキスタン軍の司令官でしたが、負傷したところを他のインド兵と一緒にLaalが救出。
インドの野戦病院に収容されますが医療従事者からは「この兵だけは従軍履歴が一切ないんだよな~」と言われながらも退院します。
負傷により両足を失いますが、車椅子で器用に生活をしLaalが起こしたRupa Companyの成功に重要な役割を果たします、最後はムンバイ同時多発テロのニュースを見て「やはり教育が大事!」と考えパキスタンに戻り学校を設立します。
現在はほぼボリウッド映画に出演をしており数年に一回の割合でパンジャーブ映画に出演してます。
キャラが強すぎたので次回はもっと普通の役を見てみたいですね。
Music Scene
音楽もPKを匂わせる内容でしたが、プロデューサーや作曲・作詞どれも異なるメンバーです。唯一プレイバックシンガーのSonu Nigamが両方に顔をだしてます。
Kahani
冒頭で羽が舞うシーンで使われてます。
Mohan KannanとSonu Nigamが歌うバージョンがありますがどちらもたいして変わりません。
Laalの人柄を表すようなほんわりとした曲
Tur Kalleyan
Rupaの死後、全インドを走るLaalの後ろを流れる曲
Arijit Singhはすっかりこのパターンの曲専門の歌手になってしまいました。
Main Ki Karaan?もソフトないい曲ですがKahaniと同じタイプの曲
全体的にソフトな曲が多くあくまでLaalのキャラに合わせた曲が多いです。
特にヒットするような曲はないですが悪くはない。
Location
Laalが全インドを走り回った為、あげたらキリがない!
映画の最初のクレジットでも多くの州政府に感謝のメッセージがありました。
まとめ
やはりコロナで止まったのは大きい!
自分がみても新鮮味が感じられませんでした。女房曰く「フォレストガンプとほぼ同じだった!」とみている方は多いでしょう。
流石に今までのAamir Khan単独主演映画ほどHitすることはないでしょう。
また、本作でもボリウッド映画の壁みたいなものが存在します。
知らなくても楽しめることではありますが知っているともっとスムーズに理解できます。
戦争やテロなど近年のインドの歴史がところどころにでてきますが、インドの歴史に興味がある方にはすぐにピン!と来る事件ばかり。
自分はあまりインド史に詳しくないですが、ブルースター作戦は実際にアムリトサルに行ったときに各所で勉強でき、カルギーリ戦争・ムンバイテロは遠いところで起こった事件だという気がしません。
シャールク・カーン登場シーン、そもそもシャールクの顔を知らない方にはなんの問題もなし。一番困るのがシャールクの顔だけ知ってる方。劇中でのシャールクはデリーで遊ぶ普通の青年、Laalに夢を語り励ますだけの短い出演でした。
シャールクはデリー出身であり映画カーストでもなく普通に生活をしていたそうです。
自分のデリーの友人はパハールガンジで会った時、「シャールクはスターになる前、本当にその辺であそんでいたんだ!」と言っていたのを思い出すシーンでした。
このようにインドやボリウッドの歴史、俳優の背景を知っていればより楽しめるのがボリウッド映画!知らないと映画館で他のインド人が盛り上がっているときに一緒に盛り上がれないといった壁ができてしまうんですね。
個人的には十分楽しめホロリと泣かせるシーンも幾つかありましたが、フォレストガンプをまともに観たことがないせいかもしれませんね。
それでも機会があれば見ておいて損はない映画ですね!